【小説】演劇的
吐き気がする。
こんな広い屋敷はもう一生かかわりがないだろう、なにせもう死ぬかもしれない、(死ぬわけにはいかない)貴族が俺ら一階の農民と話し合いを持つわけはない、何かある、呼び出された理由。
用意された酷く豪奢な部屋を抜け出した。響く足音、暗い天井、つめたい石壁。
(風が当たる場所に…)
どうやら迷ったようだ。暗がりに誘われるように歩いていたから仕様がないが。この仕打ちが永遠に続くようだった。
扉から光が漏れていた。
吐き気がする。
その奥は大きな月が映っていた。抜けるような大窓、揺れるカーテン、反射するガラス、重厚な夜の滴り。(綺麗な…)
男はふらふらと吸い寄せられた。(綺麗なつきだ)
部屋はわらっていた。中央には寝具があって、何かがいた。何かが、
(あっ)
美しい衣装。
奥には領主直属の騎士団長が亡霊のように立っている、それをまるで人形のように扱っているのが―――この地を治める気高き白…濃く深い闇にその白はよく映えた…酷く楽しそうに揺れる紫白髪が恐ろしかった。
動かない
ぞくりと背筋を電流が走る、はやくここから逃げないと、
「わるいこはおおかみがきてたべられちゃうんだよ」
気がつけば背後から響く声が俺を酷く支配した
「ふぅん?きみは悪い子?」
耳に吐息がかかる。
「おいしそう、おいしそう、あははははは」
(暗闇にすべて食いつくされた。)
fin
っていうのをdrawrで描こうとした。
サイレント漫画が好き