きんぎよものがたり

金魚とはにんげんのためにうつくしくなつた魚であつた。


あるところに
少年が居た
少年は金魚に成りたかつた
金魚といふものは夜を翔ぶ酷く美しいさかなのことである

そんなことを嘯いたみみに届いたものは
ある小唄の一節であつた

ふかい闇に住めぬかと
あまのかみに伺へば
沼にいきるがねの運命
嗚呼 ひらひらと舞うところ
ゆめかうつつかこかかのか

―――わたしがきんぎよにしてあげやふ

そんなゆめをみたものだ
いまではりつぱなきんぎよである
にんげんのためのよるをとぶ
少年は夜毎きんぎよになる

ああめでたし
愛で難し